自己愛性パーソナリティ障害,接し方
皆さんこんにちは。心理学講座を開催している公認心理師の川島達史です。今回は「自己愛性パーソナリティ障害の方との接し方」についてご相談を頂きました。
相談者
32歳 男性
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お悩みの内容
私は現在、付き合って半年になる彼女がいます。彼女は8年近く前に自己愛性パーソナリティ障害という診断を受けたことを教えてくれました。確かに付き合っていく中で振り回されることが多く困っています。彼女のことは大好きなので、今後もずっと一緒にいたいです。接し方を教えて欲しいです。よろしくお願いします。
恋人が自己愛性パーソナリティ障害をお持ちなのですね。ロマンチックで情緒豊かな方が多いので、きっと魅力にあふれているのだと思います。一方で、距離感を間違えると、大変な思いをすることもあります。そこで当コラムでは、自己愛性パーソナリティ障害の方との接し方を6つ紹介します。
①理解を深める
②共依存に注意する
③アサーティブな関係を目指す
④限界設定をする
⑤一人で悩まない
⑥成長をじっと待つ
ご自身の状況に合いそうなものがありましたら参考にしてみてください。
自己愛が強い人との接し方
①理解を深める
自己愛性パーソナリティ障害の方とうまく付き合うには、まずは障害の特性を理解することが大事です。
自己愛が強い方は、自信満々なように見えて、批判に弱い、人の目を気にしている、という特徴があります。普通の人なら笑って終わるような批判に対しても、深く傷つくことがあります。このような特徴をまずはしっかり抑えてきましょう。
詳しくは以下のコラムで自己愛性パーソナリティ障害の方の特徴を解説しています。初学者の方はぜひご一読ください。
②共依存に注意する
自己愛が強い方は、操作的に支配してくることがあります。この支配に盲目的に従っていると、共依存関係になってしまうことがあります。共依存関係とは、特定の人間関係に過度に依存し、お互いの問題を大きくしてしまうような関係を意味します。
2人だけの閉鎖的な関係
理不尽な要求も受け入れてしまう
自分の主張が通らない
拒否をして逆上されるのが怖い
こんな状態にある方は、共依存の疑いがあります。長期化すると、お互い疲弊しきってしまい、共倒れになってしまいます。あてはまると感じる方は、下記のコラムを参照ください。
③アサーティブに主張する
自己愛性パーソナリティの方と対策なしに付き合っていると、支配する、支配されるか、という関係になりがちです。これを予防するには、アサーティブコミュニケーションの学習をおすすめします。
アサーティブコミュニケーションとは、自他尊重のコミュニケーションと呼ばれ、自分と他人の、価値観、生き方、困り事をお互いに尊重する心理療法です。
しっかり学ぶと、理不尽な要求を断る、建設的に話し合う力をつけることができます。理解を深めたい方は以下のコラムを産参照ください。
④限界設定をする
理不尽な要求や、自分勝手な言動が止まらない場合は、「限界設定」が必要です。限界設定とは、「できること、できないことを明確にする」というものです。限界設定は、数字や明確な言葉を使って具体的に伝えていくことが大事です。例えば以下のようなやり方があります。
電話は11時以降はかけてこないでほしい
→破った場合は2週間会えない
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人の学歴や年収を馬鹿にしない
→破った場合は約束していた旅行を取りやめる
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1万円以上する服を買う時は相談してから
→破った場合はお小遣いを減額
このように、明確にやっていいこと、悪い事の線引きを決めることが大事です。限界設定については以下のコラムで詳しく解説しています。参考にしてみてください。
⑤一人で悩まない
自己愛性パーソナリテイーがある方は、自分を賞賛する人以外の人間関係を断ちたがる傾向があります。場合によっては、あなたの友人や家族との関係を断とうと努力してくるかもしれません。しかし、あなたはあなたの人生があります。これまで築いてきた関係を大事にして、一人にならないようにしましょう。
また悩みを抱えている場合は、一人で抱え込まず、周りに2人の問題を伝えることも大事です。特に共依存になっている場合は、自分ではその異常性に気がつけないことがあります。そんな時に適確に指摘してくれるのは周りの人なのです。もし友人がいない場合は、カウンセラーや、公的機関で相談してみるのも良いと思います。
⑥成長をじっと待つ
精神医学の研究では、パーソナリティ障害の問題は年齢と共に改善していくとされています。この点は自己愛性パーソナリティ障害をお持ちの方も同じです。年齢を重ねるごとに、だんだんと落ち着いて行かれるかたが多いです。
若い時は、自己愛の強さに振り回されていたとしても、段々と感情のコントロールができるようになり、バランスよくコミュニケーションができる方もたくさんいらっしゃいます。
今すぐ問題を解決しなきゃと焦るのではなく、そういった大きな目で、一緒に歩んでいく視点も大事にしましょう。
筆者の視点
最後に筆者の臨床経験と率直な感想をお伝えします。自己愛性パーソナリティ障害をお持ちの方は、激しい感情の揺れ動きで悩んでいます。私もカウンセリングの際にたくさん感情をぶつけられました。
一方で、パーソナリティ障害は年齢と共に、段々とおちつく傾向にあります。「先生、あのときは大変でしたね笑」と今ではお話できる方も多いです。適切な距離感を保ち、限界設定もしながら、接していけば、きっとあなたとも良好な関係を築けるはずです。
自己愛が強い方は、ドラマチックで、たった一度の人生を感情豊かに精一杯生きています。私は彼らから学ぶこともたくさんあると感じています。
心理療法を学びたい方へ
私たち公認心理師は心理学や人間関係をわかりやすく学べる講座を開催しています。内容は以下の通りです。
・心を安定させる,認知行動療法の学習
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監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科 修了
取材執筆活動など
- NHKあさイチ出演
- NHK天才テレビ君出演
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
YouTube→
Twitter→
名前
長田洋和
経歴
- 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
- 東京大学 博士 (保健学) 取得
- 公認心理師
- 臨床心理士
- 精神保健福祉士
取材執筆活動など
- 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
- うつ病と予防学的介入プログラム
- 日本版CU特性スクリーニング尺度開発
名前
亀井幹子
経歴
- 臨床心理士
- 公認心理師
- 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
- 精神科クリニック勤務
取材執筆活動など
- メディア・研究活動
- NHK偉人達の健康診断出演
- マインドフルネスと不眠症状の関連