タイプAとタイプBの意味と違い
こんにちは。公認心理師の川島達史です。私は現在心理学講座を開催しています。今回のテーマは「タイプA、タイプB」です。
目次は以下の通りです。
①タイプA,タイプBの意味とは
②タイプAと診断基準
③様々な研究を紹介
④5つの対策
コラムを読み進めていくと、基本的な知識と対策を押さえることができると思います。ぜひ最後までご一読ください。
①タイプA,タイプBの意味とは
タイプA,Bの歴史
タイプAとタイプBは、1950年代に心臓専門医のフリードマンとローゼンマンによって提唱されました。両者は、心臓系の疾患を抱えた人が座る椅子が摩耗していることに気づきます。そこでフリードマンとローゼンマンは、8年半にわたり調査を行いました。
その結果、せっかちでイライラする人ほど、冠状動脈性心臓病のリスクが2倍以上になることが分かったのです(Friedman,1959)[1]。フリードマンこれらの研究を元に、私たちの性格にはタイプAとタイプBがあることを発見しました。
タイプAの特徴
精神医学事典(2011)[2]によるとタイプAの性格は以下のように定義されています。
活動的であり、競争心や攻撃性、責任感が強く、挑戦的な性格
タイプAは、仕事で優秀な人が多いとされています。起業家、経営者、営業職、投資家、スポーツマン、などに多いと言われています。エネルギッシュで活動的な一方で、心臓系の疾患にかかりやすい、ワーカーホリックになりやすいなどの問題を抱えやすいことがわかっています。
タイプBの特徴
タイプBの性格は以下のような意味があります。
くつろいだ感覚があり、ストレスを感じにくい 協調性があり、おおらかな対人関係になりやすい
タイプBの方は、協調性が重視される、福祉的な仕事、公的な仕事などと相性が良いと推測できます。身体的には、諸説ありますが、概ね病気のリスクが低いことがわかっています。
②タイプAと診断基準
タイプAかどうかを診断する基準としては、複数の尺度があります。下記は保坂ら(1989)[3]が9,749人を対象に開発したタイプ診断となります。得点が高いほどリスクが高いことが分かっています。
理解を深めたい方はこちらの論文を参照ください。
③タイプA,タイプB研究
タイプA,タイプBについてこれまで様々な研究がなされてきました。いくつか紹介させて頂きます。
タイプAはストレスをためやすい
佐藤ら(2005)[4]の研究では、大学生155名を対象に、タイプAとタイプBについてデイリーハッスルの関連を調べました。デリバリーハッスルとは、日常の些細なストレス原因のことです。その結果が以下の図になります。
グラフが伸びているほど、デリバリーハッスルに影響されストレスを感じている状態となります。タイプA行動パターンのグラフが伸びていること
デイリーハッスルはストレス理論から派生した用語で、私たちが日々感じるストレスの原因を意味します。上記の研究では、
1.自己ストレッサー
自己の人格・生き方に関わる刺激
2.対人ストレッサー
対人関係で不快になるような刺激
3.学業ストレッサー
学業上で経験される刺激
4.物理ストレッサー
物や健康に関わる刺激
詳しく知りたい方は下記のコラムを参照ください。
タイプAは不機嫌になりやすい
高倉(1995)[5]は大学新入生を対象として調査を行いました。研究デザインは以下の通りです。
①学生をタイプA、Bの2グループにわける
②「日常に苛立つか」「不機嫌になりやすさ」「非現実的な願望」
を比較する。その結果が下図となります。
左側の3つの山の方が、右の山よりも大きいことがわかります。これは左側のタイプAの方が、右のタイプBよりも「日常的に怒りやすい」ことを示しています。
タイプAは攻撃的なゲームが好き
マシューズ・カレン(1982)[6]は、個人の競争と攻撃性について囚人ジレンマゲームを用いて行われました。囚人ジレンマゲームは、2人の囚人が相手を裏切るか、沈黙したまま相手と協力するかなど選択して、最善の状況を判断するゲーム理論で分析されたゲームです。調査の結果、タイプAの方は
競争的なゲームになりやすい
怒りの感情が出るゲームになりやすい
同じタイプAを処罰する
これらの傾向があることがわかりました。タイプAの人は、人間関係でもあつれきを生みやすく、トラブルを生みやすいかもしれません。
カウンセリングで改善できる
Friedman, Mら(1986)[7]は、心筋梗塞後患者862人を対象に、タイプAカウンセリングを実施した群と実施しなかった群で比較をしました。
その結果、病気の再発率はタイプAカウンセリングを受けていない群と比べて、受けた群のほうが発症率が低いことが分かりました。タイプAの方でも心理的な対処をすれば、改善できる可能性があることがわかります。
④タイプA向け対策
タイプAの方は、情熱的で行動力がある一方で、メンタルヘルスや身体的なリスクを抱える傾向があるので注意が必要です。そこで当コラムではタイプAの方向けに6つの対策を提案させて頂きます。
①ストレスチェック
②ストレスへの対策
③深呼吸法
④マインドフルネス
⑤アンガーマネジメント
⑥認知行動療法
ご自身でも活用できそうなものを組み合わせてご活用ください。
①ストレスチェック
タイプAの方は情熱的で物事を達成していく長所があります。一方で、物事に真面目に取り組むので、ストレスをためやすい点に注意しなくてはなりません。知らず知らずのうちに、頑張りすぎて心や体が壊れていないか、定期的にチェックするようにしましょう。具体的なチェックの仕方としては、以下のサイトがおすすめです。
厚生労働省・ストレスチェック
ダイコミュ・メンタルヘルス診断
②ストレスへの対策
強いストレスを感じていることがわかったら、対策を練るようにしましょう。1つのやり方としては、その対象から距離を置くか検討しみることを視野に入れましょう。例えば仕事であれば以下の対策が考えられます。
残業時間を減らす 納期に余裕を持たせる 一人で抱え込まない 手伝ってもらう 部署移動を申請
ストレスに対応する力はストレスコーピングスキルとして体系化されています。ストレスへの対処法をしっかり学びたい方は以下のコラムを参照ください。
③深呼吸法
頭に血が上って冷静な判断ができなくなりそうな時は、即効性のある深呼吸をすることがおススメです。深呼吸は副交感神経の働きを高め、感情を落ち着かせる効果があります。
おなかで息をしっかり吸って、鼻から息を吐くようにしましょう。これを1分間続けるだけで、かなり落ちつかせることができます。
感情的になったらまずは深呼吸!と覚えておきましょう。詳しくは以下のコラムで練習してみてください。
④マインドフルネス療法
タイプの方は、集中力が高い分、我に返ることが苦手です。この点、マインドフルネス力を高めると「感情的になっている自分」「冷静さを欠いている自分」に気がつくことができます。
マインドフルネスとは、自分の感情や考えを客観的に眺め、観察する力を意味します。深呼吸と組み合わせ、落ちついてきたら、自分がなぜ感情的になっているのか?を考えるようにしましょう。
感情的に行動して後悔することがある…という方は下記のコラムを参照ください。
⑤アンガーマネジメント
タイプAの方は人間関係でもイライラしやすくなる傾向があります。そこで他人に対してイライラしやすい方は、アンガーマネジメントを学ぶことをおすすめします。アンガーマネジメントとは、怒りを予防・制御するための心理療法プログラムで、不適切な怒りをうまくコントロールすることを目指す手法です。
1つのやり方として「距離を置く」という手法があります。もし目の前の人に腹が立ってきたら、以下のような対策も視野に入れましょう。
いったんトイレに行く 外に出て3分散歩する 休憩室に行く シャワーを浴びる
このようにイライラする対象と物理的な距離を置いてしまうとそれ以上トラブルに発展しないので有効です。アンガーマネジメントには様々な手法があります。詳しくは以下のコラムを参照ください。
⑥認知行動療法
タイプAの方は、極端な考え方をする傾向があります。この点、考え方をほぐしていくと穏やかでバランスの良い心を作ることができます。考え方をほぐす手法としては、認知行動療法が効果的です。例えば、遅刻をした人がいたときに、
遅刻は社会人として絶対に許されない!!
と考える人と
遅刻はNGだけど、人間だから遅れることもあるよなあ…
と考える人では、感情が変わってくるのは理解できると思います。おだやかな心を持っている方は、感情を安定させる思考の引き出しが多いのです。認知行動療法は下記のコラムで詳しく解説いています。お時間があるときに一通り学習してみてください。
心理学講座のお知らせ
私たち公認心理師は心理療法をわかりやすく学べる講座を開催しています。内容は以下の通りです。
・心を安定させる,認知行動療法の学習
・辛い気持ちを緩和,認知の偏りの改善
・感情のコントロール法
・健康的に生きる,生活環境の作り方
興味がある方は以下の看板をクリックしてご検討ください。皆さんのご来場をお待ちしています。
監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科 修了
取材執筆活動など
- NHKあさイチ出演
- NHK天才テレビ君出演
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
YouTube→
Twitter→
名前
長田洋和
経歴
- 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
- 東京大学 博士 (保健学) 取得
- 公認心理師
- 臨床心理士
- 精神保健福祉士
取材執筆活動など
- 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
- うつ病と予防学的介入プログラム
- 日本版CU特性スクリーニング尺度開発
名前
亀井幹子
経歴
- 臨床心理士
- 公認心理師
- 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
- 精神科クリニック勤務
取材執筆活動など
- メディア・研究活動
- NHK偉人達の健康診断出演
- マインドフルネスと不眠症状の関連
[1] Friedman, M.; Rosenman, R. (1959). “Association of specific overt behaviour pattern with blood and cardiovascular findings“. Journal of the American Medical Association. 169 (12): 1286–1296.
[2] 加藤敏, ら編(平野羊嗣:分担,編集協力者)(2011).精神医学事典 弘文堂
[3] 保坂 隆, 田川 隆介, 日野原 茂雄, 高橋 為生 日本総合健診医学会誌 16巻 1989 検診におけるA型行動パターン評価の意義―スクリーニングテストの作成―
[4] 佐瀬 竜一,児玉 健司,佐々木雄二(2005).大学生のデイリーハッスルとタイプ A行動パターンおよびアレキシサイミアの関連 駒澤大学心理学論集, 2005, 第 7号, 43-50
[5] 高倉 実 (1995).大学生のストレス過程に及ぼすタイプA行動パターンの影響 心身医学 35 巻 5 号 p. 399-406
[6] Matthews, Karen (1982). “Psychological Perspectives on the Type A Behavior Pattern“. Psychological Bulletin. 91: 302..