ヤーキーズ・ドットソンの法則の意味
皆さんこんにちは。心理学講座を開催している公認心理師の川島達史です。今回は「ヤーキーズ・ドットソンの法則」について解説していきます。
目次は以下の通りです。
①ヤーキーズ・ドットソンの法則とは何か
②逆U型,丘型
③臨床心理学への応用
④関連コラム
是非最後までご一読ください。
①ヤーキーズ・ドットソンの法則とは何か
意味
ヤーキーズ・ドットソンの法則は、APA 心理学大辞典(2013)[1]で以下のように紹介されています。
動機づけによる覚醒レベルと遂行成績の関係は、逆U字カーブで表現できる法則
学術的でややわかりにくいですね。簡単にすると、ストレスが適度にある時にやる気がもっとも高くなる法則を意味します。
歴史・提唱者
ヤーキーズ・ドットソンの法則は、心理学者ロバート・ヤーキーズとジョン・ディリンガム・ドッドソンが1908年に提唱した法則です[2]。ロバートヤーキースは、動物と知能についての先駆的な研究者でした。動物好きが相まって、2匹のチンパンジーを購入し、育てたことでも有名です。
ヤーキーズとドットソンは、「強い電気ショックを流すマウス」「弱い電気ショックを流すマウス」にわけ、学習の成果を比較しました。その結果、「強い電気ショックを流すマウス」は学習効果が現れず、「弱い電気ショックを流すマウス」は効果的に学習することがわかりました。この実験から、適度なストレスは、学習に効果的であることがわかったのです。
実験の図
下記はヤーキース・ドットソン法則の元となったデータです[2]。縦軸は上に行くほど学習が遅く、下に行くほど速いことを表しています。また横軸は、電気ショクの強さを表しています。
②逆U型,丘型
ヤーキズ・ドットソン曲線は、簡易化された2つの曲線として有名になっていきました。
逆U字型
逆U型は、横軸のストレスレベルが小さい時と大きすぎる時は、パフォーマンスが低く、適度なストレス時にパフォーマンスが最も高くなることを表します。
逆U型は、複雑な課題の際になりやすいと言われています。たとえば、難関資格に挑む場合の1日の勉強時間で考えてみましょう。1日15時間の勉強を1年間休み無しでやるぞ!と考えてチャレンジをしても、結局はどこかで体を壊してしまいます。
一方で、1日7時間の勉強をベースに、1か月に2日は完全オフを取るぞ!とすれば、集中力を持続させ、メンタルヘルスも良好な状況を保つことができそうです。
丘型
ヤーキーズ・ドットソンの法則では、丘型も示されています。以下の青い図をご覧ください。U型と異なり、大きなストレスがある時も、高いパフォーマンスが維持されます。
丘型は比較的簡単なタスクの際にあてはまるとされています。例えば、簡単で楽しいゲームの場合は、長時間睡眠をとらなくても覚醒し続けることがあったりします。このように簡単な課題の場合は、ストレスレベルを上げてもパフォーマンスは維持されるのです。
③臨床心理学への応用
ヤーキーズ・ドットソン曲線は、実際の臨床心理学の分野でも参考にされています。
ストレスがないケース
ストレスが少ないケースでは、無気力になりやすい、やる気が出ない、という問題が起こりやすくなります。精神疾患や症状としては、無気力症候群、空の巣症候群、燃え尽き症候群、などが検討されます。このようなケースでは、目標や生きがいを見つけ、適度なストレス状態を作るように心理的援助が行われます。
ストレスが過剰なケース
ストレスが過剰になってるケースでは、パフォーマンスが低下するため、結果が出にくくなります。その結果、自責の念が強くなる、自信を喪失する、希望を失うという心理的問題を抱えやすくなります。精神疾患や症状としては、適応障害、うつ病、などが検討されます。このようなケースでは、休息を十分とり、過剰になっている目標を身の丈に合ったものに変えるなどの心理的援助が行われます。
④関連コラム
ストレスマネジメント
ヤーキーズ・ドットソン曲線はストレスマネジメント理論でよく議論されます。パフォーマンスが低下した時にストレスを調整する力をつけたい方は以下のコラムを参照ください。
フロー心理学
現在ではヤーキーズ・ドットソン曲線に似た理論としてフロー心理学があります。フロー心理学では、課題の困難さとスキルレベルという2軸で、集中力やパフォーマンスを考えて行きます。理解を深めたい方は以下のコラムを参照ください。
心理学講座のお知らせ
心理学をより深く学びたい方、人間関係に関するトレーニングをしたい方は、公認心理師主催の講座をおすすめしています。内容は以下の通りです。
・ヤーキーズ・ドットソンの基礎
・ストレスを溜めない,主張トレーニング
・やる気を引き出す,フロー心理学
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ダイコミュ用語集監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科 修了
取材執筆活動など
- NHKあさイチ出演
- NHK天才テレビ君出演
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
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名前
長田洋和
経歴
- 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
- 東京大学 博士 (保健学) 取得
- 公認心理師
- 臨床心理士
- 精神保健福祉士
取材執筆活動など
- 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
- うつ病と予防学的介入プログラム
- 日本版CU特性スクリーニング尺度開発
名前
亀井幹子
経歴
- 臨床心理士
- 公認心理師
- 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
- 精神科クリニック勤務
取材執筆活動など
- メディア・研究活動
- NHK偉人達の健康診断出演
- マインドフルネスと不眠症状の関連
[1] VandenBos, G.R. (Ed.). (2007). APA Dictionary of Psychology. Washington, D.C.: American Psychological Association. (ファンデンボス, G.R. (監修)繁枡 算男・四本 裕子(監訳) APA 心理学大辞典 p. 882 培風館)
[2] Yerkes RM, Dodson JD(1908).The relation of strength of stimulus to rapidity of habit-formation. Journal of Comparative Neurology and Psycholog
*出典・参考文献
・ファンデンボス,G.R.(2013)APA 心理学大辞典,882
・Yerkes RM, Dodson JD 1908 The relation of strength of stimulus to rapidity of habit-formation . Journal of Comparative Neurology and Psychology
・図形出典
https://en.wikipedia.org/wiki/Yerkes%E2%80%93Dodson_law