デマの意味とは

皆さんこんにちは。コミュニケーション講座を開催している公認心理師の川島達史です。今回は「デマの意味」について解説していきます。目次は以下の通りです。

①デマの意味
②デマの特徴
③デマによる事件
④関連コラム

是非最後までご一読ください。

①デマの意味

意味

デマは以下の意味があります。

うその情報 根拠のないうわさ
(新明解語源辞書, 2011年)[1]

デマはドイツ語「デマゴギー」の略語です。デマゴギーは、政治的な意図をもって悪評をたれ流したり、嘘情報を流すと言った、政治用語が語源になっています。

デマ拡散の公式

デマの広がりについて、心理学者のG.W.オルポート、L.ポストマンは、人々にとっての問題の重要性、状況の曖昧さの積に比例してデマが広がると主張しています[2]。具体的には、以下の方式で示すことができます。

R=I×A

R(rumor:デマの広がりやすさ)
I(importance:重要性)
A(ambiguity:曖昧さ)

上記のように、古典的な公式は「R=I×A」でした。最近では、SNSなどでデマが拡散されるため、最近ではN(ネットワーク)を追加するようになっています。日本語で表記をすると、デマの量=重要性×曖昧さ×ネットワークです。

R=I×A×N

R(rumor:嘘情報、デマ)
I(importance:重要性)
A(ambiguity:曖昧さ)
N(network:通信でのつながり)

②デマの特徴

二度聞き効果

心理学の用語には二度聞き効果があります。二度聞き効果の意味としては以下のようになります。

別々の人から同じ情報を聞くと信じやすいこと。

例えば、ネットで「3日後に地震が起こる!」という偽情報を見た方がいたとします。

その後に喫茶店に行ったときに、隣に座っていた人がたまたま同じ偽情報のサイトを見ていて、会話の中で「3日後に地震が起こるんだって!」と話していたとしましょう。この時、情報を信じやすくなってしまうのです。

デマが発生しやすい状況

白井ら(2012)[3]は、コスモ石油事件に関するデマツイート及び訂正ツイートを抽出し、時間当たりのツイート数をまとめています。その一部が以下のグラフです。

 

デマ情報と訂正情報

上図はデマは最初の1日で急速に増え、その後、訂正ツイートで急速に鎮火していることを意味しています。この事件でのデマツイートは9,652、訂正ツイートは25,883と分かりました。事件や事故の発生直後は、デマ情報が出回りやすく、その後正しい情報が出てくると急速になくなるのです。

デマを信じやすい人の特徴

Álexら(2023)[4]の研究では、 1,452 名の参加者を対象にフェイクニュース(デマ)を信じやすい人の特徴を調べました。

その結果が以下のグラフです。

デマを見抜けない人

デマを見抜けないグループには統合失調症や偏執症や、周りの気を引きたくて演技的になる演技性パーソナリティ障害の特徴が見られます。また、暗示にかかりやすく、スリルを求める人もデマを見抜きにくい特徴があります。

逆に、デマを正しく見抜けないことにより、特性不安や歴史主義の傾向、統合失調症やパラノイアといった症状、バーナム効果などのバイアスが引き起こされ、精神病理学的リスクが増加する可能性が指摘されています。

ただし、デマを見抜くよう指示されたプレッシャーから生じる不安症などの傾向も考慮する必要があるでしょう。特に新型コロナウイルス関連のテストは、知識の差や新型コロナウイルスに対する不安の影響を受ける可能性もあります。

デマを信じた人を覆すのは難しい

Chanら(2017)[5]は誤った情報を説得し直すこと関するを8 件の研究報告を精査して、誤った情報(デマ)に基づく信念や態度を覆す要因について調べました。

その結果の1つとして、デマを暴くメッセージと、デマをを暴く詳細なメッセージでは後者の方が効果があることが分かりました。しかし、デマを暴く詳細なメッセージは、デマの「誤情報持続効果」と関連があったのです。

誤情報持続効果とは、誤情報の誤りが指摘されたにもかかわらず、その後も誤情報を信じ続け、その影響を受け続けるという心理現象のことです。つまり、デマを暴くためのメッセージを詳しく伝えても、相手は誤情報を信じ続け、その影響を受け続けてしまうのです。

この研究ではデマを信じた人を説得するためのポイントも述べられています。興味がある方は展開してチェックしてみてください。

デマを覆すには、以下の3つのポイントが重要だとされています。

1.デマを詳しく説明しないこと
デマを内容を詳しく説明すると、デマ情報への信念が強化され、デマへを覆すことが困難になります。

2.デマに対して反論をする
デマに対して懐疑的な態度を取り、撤回や訂正が得られた場合には、デマ情報に対して詳細な反論や理解を促すことが大切です。

3.新しい情報で反論する
デマの内容について単純に「間違っているよ」と反論するよりも、新しい情報で詳細にデマに反論する方が効果的です。

しかし、デマが持続するかどうかは、デマが最初にどう認識されるかで決まります。常にデマへの反論が上手くいくとは限らない点に注意しておきましょう。

③デマによる事件

デマや流言について実際の事件をいくつか紹介いたします。興味がある項目をクリックしてみてください。

女子高生の雑談をきかっけに、噂話が広がり取り付け騒ぎまで発展した事例です。

豊川信用金庫に就職する女子高生Aは、友人から「信用金庫は危ないらしいよ」とちゃかされました。不安になった女子高生Aは、親戚Bに「信用金庫は危ないの?」と尋ねたそうです。その後、親戚Bは「危ないらしい」と美容室経営者Cに告げます。その後ドミノ倒しで噂話は広がり、約20億円の預貯金が引き落とされる取り付け騒ぎに発展しました。

事件後の捜査によると、友人が女子高生Aに伝えた「危ない」は「(強盗が入るから)危ない」という意味だったことが分かりました。何が危ないかを省いたことで、情報が不確かとなり、次々に情報が歪んで伝わってしまったのです。最終的には「行員が3億使い込んだ!」「倒産の説明会をしている」「理事長が自殺した」など、驚くようなデマに発展していました。

コスモ石油の製油所火災から発生した、SNSでデマ情報が拡散した事件です。

東日本大震災直後、コスモ石油の千葉製油所で火災が発生し「有害物質が降るのでは?」という情報がTwitterで拡散されました。拡散された情報がデマだったことから、コスモ石油は公式WEBページで「火災による人体へ及ぼす影響は非常に少ない」と発表するまで発展しました。

熊本地震の直後に発生した、SNSで拡散されたデマ情報による事件です。

熊本地震の直後、道路に立つライオン写真とともに「近くの動物園からライオン放たれた」という悪質なデマ情報がTwitterに投稿され、SNSで拡散されました。デマ情報は2万回以上リツイートされ、熊本市内の動物園に問い合わせた殺到しました。

デマ情報の投稿者は「悪ふさけ」で行ったそうですが、事件後、偽計業務妨害の疑いで逮捕されています。

SNSで拡散した「新型コロナウィルス」に関するデマ情報です。世界規模で感染が広がった新型コロナウィルスは、当初、根拠のないうわさやデマ情報が拡散されました。たとえば、以下のような事例が挙げられます。

アメリカでのデマ
Twitterの投稿から「漂白剤がコロナに効く」というデマ情報が拡散されました。漂白剤は、使い方を誤ると死に至る危険性もあることから、BBCやCNNなどで「漂白剤(主に次亜塩素酸)を飲まないよう」にという注意喚起がされるまでに発展しました。この情報は、桜美林大学の平和博教授がデマであることを明確にしています。

日本でのデマ
「トイレットペーパーの製造は中国に依存しているため、近いうちに入手できなくなる」などデマ情報が拡散され、日本各地でトイレットペーパーを買い占める動きが広がりました。この状況を受け日本家庭紙工業会は、十分な在庫を確保していることを発表しています。

不安が強い状況では、デマ情報が拡散しやすいため注意が必要です。

 

④関連コラム

デマに騙されない方法

当コラムではデマの意味や研究を中心に解説してきました。以下のコラムではより実践的にデマや印象操作に騙されない方法を解説しました。理解を深めたい方は参照ください。

デマや印象操作に騙されない方法

嘘を見抜く方法

意図的にデマを流す人に対しては、表情筋や声の抑揚に注目するとうまくいきます。以下のコラムでは特に注目すべき点を解説しています。是非参考にしてみてください。

嘘を見抜く方法

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ダイコミュ用語集監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


YouTube→
Twitter→
元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

・出典

[1] 小松寿雄,鈴木英夫(2011),新明解語源辞典  株式会社三省堂 , p637

[2] Allport, Gordon W. (Gordon Willard)Postman, Leo Joseph(1965, c1947).The psychology of rumor, Russell & Russell./ G.W.オルポート, L.ポストマン 共著, 南博 訳(1952)デマの心理学 岩波書店

[3] 白井嵩士・榊 剛史・鳥海不二夫・篠田孝祐・風間一洋・野田五十樹・沼尾正行・栗原 聡
(2012).「Twitter ネットワークにおけるデマ拡散とデマ拡散 防止モデルの推定」,人工知能学会研究会報告

[4] Álex Escolà-Gascón, Neil Dagnall, Andrew Denovan, Kenneth Drinkwater, Miriam Diez-Bosch,
(2023).Who falls for fake news? Psychological and clinical profiling evidence of fake news consumers,
Personality and Individual Differences,Volume 200,111893,ISSN 0191-8869,https://doi.org/10.1016/j.paid.2022.111893.

[5] Chan, M. S., Jones, C. R., Hall Jamieson, K., & Albarracín, D. (2017). Debunking: A Meta-Analysis of the Psychological Efficacy of Messages Countering Misinformation. Psychological Science, 28(11), 1531-1546. https://doi.org/10.1177/0956797617714579