ストレンジシチュエーション法
皆さんこんにちは。コミュニケーション講座を開催している公認心理師の川島達史です。今回は「ストレンジシチュエーション法(SSP)」について解説していきます。目次は以下の通りです。
①ストレンジシチュエーション法とは
②ストレンジシチュエーション法の手順
③4つの分類
④手法への批判
⑤関連コラム
是非最後までご一読ください。
①ストレンジシチュエーション法とは
意味・定義
ストレンジシチュエーション法(Strange Situation Procedure:SSP)は、心理学辞典(1999)[1]で以下のように定義されています。
愛着理論に基づき、乳児期の母子間の情愛的結びつきの質を観察し、測定するために開発した実験法である。実験の手続は、人みしり激しい満1歳時の乳児が母親と見知らぬ部屋(実験室)入室し、見知らぬ人物(実験者)に会い、母親はこの人物に乳児を託して退出し、しばくしてまた戻ってくるというもので、全体で八つのエピソード場面からなる
ストレンジシチュエーション法の”ストレンジ”とは、”見知らぬ”を意味します。つまり、見知らぬ人との状況で赤ちゃんにどのような反応が現れるかをチェックするのです。わかりやすく表現すると、母親と赤ちゃんの愛着を測定する実験方法と理解するといいでしょう。
歴史と提唱者
1958年に精神科医のジョン・ボウルビィが愛着理論の実証研究を発表します[2]。ボウルヴィは「子供からその親への結びつきの性質」という論文で愛着という概念を提唱しました。1978年になると、発達心理学者のメアリー・エインスワース(Mary Dinsmore Salter)が幼児の愛着行動を観察する手法を開発し、その手法がストレンジ・シチュエーション法と呼ばれるようになりました[3]。
②ストレンジシチュエーション法の手順
エインズワーズは、ボルティモアにおける母子23組を対象に、ストレンジ・シチュエーションを土台として研究を行いました。手順は以下の通りです。
①お母さんと赤ちゃん入室(30秒)
観察者は、お母さんと赤ちゃんをプレイルームに誘導する。お母さんは子どもを抱いて入室し、赤ちゃんを降ろす場所を説明して退室する。赤ちゃんにとっては初めての環境。
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②赤ちゃんを遊ばせる(30秒)
お母さんは椅子に座る。赤ちゃんはおもちゃで遊んでいる。
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③見知らぬ人入室(30秒)
見知らぬ人(ストレンジャー)がプレイルームに入る。お母さんと見知らぬ人は、椅子に座る。3人は、以下の流れでコミュ二ケーションを取る。
・1分間黙ったままでいる
・1分間会話する
・1分間見知らぬ人と赤ちゃんが遊ぶ
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④お母さん退室(3分以下)
お母さんが退室する。見知らぬ人は、赤ちゃんが泣いたらなだめる。泣かなければ、そのまま座っている。
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⑤お母さんとの再会(3分以上)
お母さんと再会、見知らぬ人は退室する。
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⑥再びお母さんとの再会(3分以上)
お母さんが退室、赤ちゃんがひとり残される。
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⑦見知らぬ人が入室(3分以下)
見知らぬ人が入室、赤ちゃんをなぐさめる。
・
⑧お母さんと再会(3分以下)
お母さんが入室し、見知らぬ人は退室する。
ストレンジシュチエーション法を行うことで、赤ちゃんの愛着行動を誘発することができます。結果に基づいて愛着スタイルを分類していくのです。
※英語版ですが、ストレンジシュチエーション法の動画がありました。
映像で流れを知りたいという方は下記を参考にしてみてください。
③4つの分類
エインズワースは、ストレンジシュチュエーション法による赤ちゃんの態度には4つのタイプがあるとしています。
回避型(Aタイプ)
avoidant
親がいなくなっても不安にならないし、戻ってきても、全然喜びを表現せず、むしろ回避的になります。また自分の遊びに集中し続けるという特徴が見られました。研究では26%が回避型でした。日常的には、親は拒絶的であることわかりました。
安定型(Bタイプ)
secure
親がいなくなると、不安になって、その後、親が戻ってくると、素直に喜びます。そして親とひとしきりコミュニケーションを取った後に遊び出します。エインワーズの研究では57%が安定型でした。日常的には親はよく気遣っているということがわかりました。
アンビバレント型(Cタイプ)
ambivalent
親がいなくなると、激しく怒り、戻ってくると、親になぜいなくなったのか激しく怒りをぶつけてきます。そして親とのコミュニケーションを求め続け、自分の遊びをはじめないという特徴が見られました。研究では17%がアンビバレント型でした。日常的には親は一貫性のない接し方をしていることがわかりました。
無秩序・無方向型(Dタイプ)
disorganized/disoriented
円ワーズの研究後、教え子であったらメインら(1986)によって無秩序型が追加されました。親に対する態度に一貫性がなく、背を向けながら近づいたり、泣いたり、じっとう動かないという特徴があります。日常的には、親が抑うつ的で虐待などをしているケースもみられることがわかりました。
ストレンジ・シチュエーションの減衰性については、2,000 の乳児と親のペアのメタ分析が行われています[4]。
その結果、愛着分類の世界的な分布が A (21%) 、B (65%)、 C (14%)であることがわかりました。この全体的な分布は、エインズワースら (1978) の元の愛着分類分布とほぼ一致していました。
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ダイコミュ用語集監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科 修了
取材執筆活動など
- NHKあさイチ出演
- NHK天才テレビ君出演
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
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名前
長田洋和
経歴
- 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
- 東京大学 博士 (保健学) 取得
- 公認心理師
- 臨床心理士
- 精神保健福祉士
取材執筆活動など
- 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
- うつ病と予防学的介入プログラム
- 日本版CU特性スクリーニング尺度開発
名前
亀井幹子
経歴
- 臨床心理士
- 公認心理師
- 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
- 精神科クリニック勤務
取材執筆活動など
- メディア・研究活動
- NHK偉人達の健康診断出演
- マインドフルネスと不眠症状の関連
[1]
[2] JOHN BOWLB (1958). THE NATURE OF THE CHILD’S TIE TO HIS MOTHER Reprinted from: International Journal of Psycho-Analysis, 1958, 39, 350-373.
[3]
[4] van IJzendoorn, Marinus H.; Kroonenberg, Pieter M. (1988). “Cross-Cultural Patterns of Attachment: A Meta-Analysis of the Strange Situation” (PDF). Child Development. 59 (1): 147–56.
[5]