バーナム効果の意味

皆さんこんにちは。コミュニケーション講座を開催している公認心理師の川島達史です。今回は「バーナム効果」について解説していきます。

バーナム効果の意味

目次は以下の通りです。

①バーナム効果とは何か
②バーナム効果と心理学の研究
③効果が大きくなる3つの条件
④使い方・注意点
⑤関連コラム

是非最後までご一読ください。

①バーナム効果とは何か

意味

バーナム効果は、心理学辞典(2013)[1]で、以下のように解説されています。

一般的な内容の個人的フィードバックを正しいものとして受け入れてしまう人々の傾向

言い換えると、誰にでも当てはまりそうな内容を、あたかも自分にピッタリと感じてしまい、信じてしまう心理を意味します。バーナム効果が発揮されると、この人はよくあたる!信用できる!発言を受け入れないと!という気持ちになっていきます。

語源と歴史

バーナム効果の語源はアメリカのフィニアス・テイラー・バーナムという人物がもとになっています。バーナムは、アメリカの興行師で、1880年代にサーカスの興行で人気を集めた人物です。

天才的な人物で、口先一丁で人の心を魅了することから、嘘つきと呼ばれる一方で、稀代のエンターテイナーとして魅力的な人物でもあります。映画「グレイテスト・ショーマン」のモデルにもなっています。

そんなバーナムですが

we’ve got something for everyone
誰にでも当てはまる要素がある

という言葉を残しています。直訳だと少しわかりずらいですね。この言葉は、以下のようにとらえる事もできます。

誰にでも当てはまることでも、さもその人にあてはめて言えば人は容易に、自分をすごい人物だ!と信用する

バーナムはこのような名言をたくさん残したことでも有名です。このバーナムが残した言葉をもとに、アメリカの心理学者であるポール・エバレット・ミールが、1956年に「ウォンテッド–グッドクックブック」というエッセイで、バーナム効果と名づけたのが語源とされています[2]

ポール・エバレット・ミール

②バーナム効果と心理学の研究

バーナム効果は、別名フォアラー効果と呼ばれることもあります。これは心理学者バートラム・フォア(1948)[3]がよく似た研究を行っていたことに由来します。バートラムは、心理学の学生39人に対して以下のような実験しました。調査の手順はこちらです。

① 興味関心テストを行う

まずは興味関心テスト(Diagnostic Interest Blank)を行います。テストでは、趣味や読書量、個人の特性などをたずねています。実はこのテストはどうでも良いテストなのです。そして、1週間後、一人一人にテストの診断結果を伝えます。この結果は、全員同じ内容となります。さも正しいテストかのように見せて、個人ごとの評価を行っているように見せかけます。

その結果は以下の通りです(雨宮,2004)[4]。もしよろしければ皆さんもご一読ください。

あなたは他人に好かれたい、尊敬されたいという欲求を持っていますが、自分自身には懐疑的です。性格的に弱いところはありますが、日常的にはこうした欠点を克服できています。あなたには、まだ隠された素晴らしい才能がありますが、それを使いこなすところまではいっていません。外面的にはよくしつけられて自己抑制もできていますが、内面的には臆病で不安定なところがあります。ときとして、正しい決断をしたのか、正しいことをしたのかと深く悩むことがあります。ある程度変化と多様性を好み、規則や規制でがんじがらめになるのを嫌います。自分でものごとを考えていて、そのことに誇りを持っています;根拠もなしに他人の言うことを信じたりはしません。ですが、他人に易々と自分の内面を見せてしまうのは賢いことではないとも知っています。外交的で愛想よく、社交的なときもある反面、内向的で用心深く、無口なときもあります。非現実的な野望を抱くこともあります。

②評価をしてもらう

その後、テストの結果が、診断結果について、どの程度当てはまっているかを、0(全くあてはまらない)~5(非常に正確)で評価してもらいます。調査の結果、評価の平均点は4.26でした。同じ調査結果にもかかわらず、自分によく当てはまると感じた人が多かったということです。

実はこの文書は、新聞の占星術欄から星座を無視して抜き出したものでした。このように誰でもあてはまることを記述することで、信じてしまったり信憑性をもったりしてしまうことをフォアラー効果と呼ぶのです。

③効果が大きくなる3つの条件

バーナム効果は以下の3つの条件で大きくなります。

自分だけ

貴方だけ!というニュアンスで言われると信じやすくなります。たとえば、マルチ商法の人は、特定の人に向けているようにみせるため名前をよく呼びます。貴方だけに教えている、〇〇さんならいけると思う、〇〇さんにはピッタリ、このような発言を根拠なく連発する方には注意が必要です。

権威がある

発言者が仰々しい肩書を持っているときは信じやすくなります。有栖川宮詐欺事件では、皇族の親族を語った投資詐欺の事件です。相手の肩書をうのみにしないように気をつけましょう。

前向きな内容

バーナム効果は前向きな内容であればあるほど信じやすくなります。例えば、「あなたは創造力豊かで、もっと力を発揮したいと考えています。」こんな内容は誰でもそのように考えるものなのですが、なぜか当たっていると感じてしまうのです。

④使い方・注意点

錯覚を起こすバーナム効果は、すべてが悪いわけではありません。前向きな使い方をすれば生活に役立てることもできます。ここでは、バーナム効果の前向きな使い方と注意点を見ていきます。

前向きな使い方

・心が軽くなる
バーナム効果は、プラスの引き出しを増やす効果が期待できます。たとえば、占いがこれだけはやっているのは、占いで元気づけられている方がいる証拠です。前向きな発言を信じることで、心が軽くなる点も確かにあるのです。

・長所への気づき
バーナム効果は基本的に、前向きなことを言ってくれます。そのため、自分の気付かなかった魅力に気付けることがあります。

・エンタメとして活用
占いや診断は、ある程度科学的根拠が薄いことを分かったうえで活用すれば、エンタメとして活用できます。特に、雑談の楽しみ方として持てると場を盛り上げることにも活用できます。

注意すべき点

バーナム効果は「信じさせる効果」があるので、マルチ商法、投資詐欺、高額な資格取得などで悪用されがちです。何かを買わせようとしたり、金銭的な要求が発生する場合は、相手がバーナム効果を使っていないか?見抜けるとだまされることもすくなくなるでしょう。

⑤関連コラム

印象操作に騙されない方法

当コラムではバーナム効果の意味や研究を紹介してきました。実践的に印象操作に騙されない力をつけたい方は以下のコラムを参考にしてみてください。心構えや具体的な騙されない方法を解説しています。

印象操作に騙されない方法

フレーミング理論

印象操作の1つにフレーミング理論があります。フレーミング理論は、情報の見せ方によって、印象を操作する方法です。同じ情報でも、伝え方で説得率は随分変わってきます。是非参考にしてみてください。

フレーミング理論とは何か

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ダイコミュ用語集監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

・出典

[1] VandenBos, G.R. (Ed.). (2007). APA Dictionary of Psychology. Washington, D.C.: American Psychological Association. (ファンデンボス, G.R. (監修)繁枡 算男・四本 裕子(監訳) APA 心理学大辞典 p. 636  培風館)

[2] Meehl, Paul E. (1956). “Wanted – A Good Cookbook“. American Psychologist. 11 (6): 263–272

[3] Forer BR (1949). The fallacy of personal validation: A classroom demonstration of gullibility Journal of Abnormal and Social Psychology. 44, 118-123

[4] 雨宮 俊彦(2004). 人文・社会系の実学教育のための覚え書き: 可謬主義と議論法研究について 関西大学社会学部紀要 35巻  3号  131-167ページ