コミュニティの意味とは

皆さんこんにちは。コミュニケーション講座を開催している公認心理師の川島達史です。今回は「コミュニティ」について解説していきます。

コミュニティの意味,こみみ様作成

目次は以下の通りです。

①コミュニティとは何か
②コミュニティ感覚とは何か
③形成プロセス
④コミュニティの効果
⑤関連コラム

是非最後までご一読ください。

①コミュニティとは何か

意味

英語の単語の「community」は古フランス語の「comuneté」に由来しています。comunetéには共同体という意味があります。千葉大学の広井教授(2008)は以下のように定義しています[1]

人間が、それに対して何らかの帰属意識をもち、かつその構成メンバーの間に一定の連帯ないし相互扶助(支えい)の意識が働いているような集団

この定義によるとコミュニティには、帰属意識、連帯感がある、助け合いがあるという3つの条件があると言えます。

また鈴木(1986)では、「com」と「munus」の語源から意味を解説しています[2][3]

コミュニティ(community)という英語は,もともとはラテン語のコミュニースという言葉で「com」という字と「munus」という字が一緒になったものである。「com」というラテン語の意味は英語の「with」にあたり,「一緒に」「共同して」である。
「munus」は英語の「servise」「duty」の意味で,「貢献」「任務」である。したがって,コミュニティの意
味は「共同の貢献」「一緒に任務を遂行すること」ということになる。

コミュニティの幅広さ

コミュニティは東アジア共同体、アフリカ連合など、大規模なものから、芸能人のファンのコミュニティ、ゲームのコミュニティなど小規模なものがあります。コミュニティは名前がないことも多く、またその発生時期も不明確で、自然発生的に成立するものもたくさんあります。

②コミュニティ感覚とは何か

マクミラン,チャビス(1986)は、「コミュニティの感覚」には4つの要素があるとしています[4]

メンバーシップ

所属感や個人的なつながりを共有する感覚です。例えば、自分のプライベートなことを共有できる安心感、本音で話せる関係が構築できているという感覚などが挙げられます。

影響力

自分がメンバーにとって重要であり、自分が所属していることでグループに影響をもたらすことです。例えば、周りが自分の話しを聞いてくれる、それによって行動を変えてくれるなどの状態が挙げられます。

ニーズの統合と実現

コミュニティへの参加によって、何らかの形でメリットを享受できていることです。例えば、人間関係が深まる、知識やスキルが深まる、視野が広がるなど利点が得られている状態になります。

情緒的なつながりの共有

感情的なコミュニケーションができており、喜怒哀楽をお互いに表現し合い、共感できていることです。例えば、お互いに笑い合ったり、悔しい時に気持ちを打ち明けたり、不満を言い合える関係が挙げられます。

参加者がどのくらい情緒的なつながりの共有を体験しているかは「コミュニティ感覚指数(SCI)」で測定することができます。チャビスによって開発されました。この指数は学校、職場、およびさまざまな用途に活用されています。

 

③形成プロセス

スコット・ペック(1990)はコミュニティ構築は、以下のプロセスは4つの段階を経ると述べています[5]

1,疑似コミュニティ

まずはお互い好意的に接しようとします。チームメンバー同士、相手に友好的な印象を与えようとします。例えば、アイスブレイクをして緊張をほぐしたり、お互いの自己紹介を始めたりします。

2.カオス

徐々に信頼関係を築き、自分のダメな部分をさけら出しても大丈夫だと感じるようになります。例えば、やや砕けた口調になったり、ユーモアを言ったりするようになります。

3.空虚

お互いの心の傷を打ち明けるだけではなく、認め合い・励まし合うようになります。例えば、本当に悩んでいることを相手に打ち明けたり、相談したりできるようになります。

4.真のコミュニティ

お互いの価値観を心から尊重し合い、メンバーのことを完全に信頼している段階です。例えば、本音や秘密を打ち明けられる、家族や親友グループのように心から気を許せるコミュニティが挙げられます。

1991年にペックはコミュニティを構築することは簡単ですが、現代はコミュニティを維持することは難しいと述べています。つまり、たとえ真のコミュニティを構築できたとしても、それが永続的に続くわけではなく、時間の流れによって、崩壊してしまうこともあるということです。

④コミュニティの効果

不安感が減る

大坪(2017)[6]は、大学生254名に対して、ソーシャルサポートと心理的な問題について調査を行いました。その結果の一部が以下の図です。

大切な人のサポート 不安感

上図は、不安感が高いほど、大切な人のサポートを得られにくいという意味があります。所属コミュニティが少ないと、大切な人からのサポートも得られにくくなります。その結果、不安な状態になり、メンタルヘルスにも悪影響を及ぼすと推測できそうです。

将来への希望を捨てる

厚生労働省(2013)[7]は、仲の良い友達の数が「自分の将来」への捉え方にどのように影響を与えるのかを調査しました。その結果が以下の図です。

コミュニティ 友人希望

上図は、仲のいい友人が少ないほど、自分の将来に希望を持てない人が多いことを示しています。所属コミュニティが少ないと、仲の良い友達も少なくなると推測されます。その結果、将来への希望も少なくなってしまうのです。

犯罪防止

人間は孤独になると、失うものがなくなってしまいます。すると、悪いことをするリスクが下がります。極端に言ってしまうと、犯罪に手を染めやすくなります。

例えば、「法務省 平成20年犯罪白書」[8]によると、犯罪を繰り返す高齢者は、単身者が多いことがわかっています。以下のグラフをご覧ください。

コミュニティ 犯罪

このように、前歴あり、前科あり、受刑歴ありの単身者が50%を上回っていることが分かります。なかでも、受刑歴あり群は77.9%と高い数値となっています。高齢者のコミュニティの少なさは、犯罪を促進させてしまう可能性があるでしょう。

自由度が増す

孤独というと自由とみられがちですが、実は一人でできることは世の中そこまで多くありません。コミュニティが多いという事はそれだけ行動の幅が広がるのです。

コミュニティの負の側面

社会的手抜き

社会的手抜き(Social loafing)[9]は、集団での協同作業において、参加者一人あたりの生産性がグループの規模とともに低下する現象です。別名、リンゲルマン効果やフリーライダー現象とも呼ばれます。

コミュニティ内での自己評価が難しい場合や、報酬が個人の努力とは無関係な状況では、努力を怠る傾向が見られます。また、他者と比較して過度な努力が馬鹿らしいと感じ、集団の努力水準に同調することもあります。つまりコミュニティの規模が大きくなるほど、自分の影響が少なくなり、その分「怠けてもバレないだろう…」と考えてしまうのです。

アッシュの同調実験

アッシュの同調実験(1956)[10]では、123 人の被験者を対象に集団の中での同調行動について調査しました。

スワースモア大学の男子大学生を被験者とし、8人のグループを組んで実施されました。このうち7人は実験者が仕込んだ偽の被験者で、1人だけが実際の被験者でした。

被験者は他の7人と面識がなく、実験者は彼らに左側の基準となる直線を示しました。被験者は右側の3つの直線の中から基準線と同じ長さのものを選び、最後に回答するよう指示します。実際には、サクラ役の6人が先に回答し、途中から仕組まれた誤った回答をするようになりました。アッシュの同調実験 コミュニティ

出典:Wikipedia

 

実験の結果、37%の回答で真の被験者がサクラ役の間違った回答に同調することが明らかになりました。

被験者ごとの分析では、約3/4が少なくとも1回の同調行動を示し、全く同調しない被験者は約1/4でした。全員が一貫して同調する被験者はいなかったという結果が得られました。

つまり人は、コミュニティのなかにいると正しい判断ができず、集団に流されてしまう傾向があるのです。

⑤関連コラム

コミュニティに所属する方法

当コラムではコミュニティの意味や研究を紹介してきました。実践的にコミュニティに健康的に所属する方法を検討したい方は以下のコラムを参考にしてみてください。

コミュニティにを探す方法

会話のトレーニング

コミュニティでは、人間関係を築く力が大事になります。この時大事なのは、何気ない会話をするスキルです。コミュニティに所属をしてもうまく溶け込むことができない・・・と感じる方は以下のコラムを参照ください。

会話のトレーニング

コミュニケーション講座のお知らせ

人間関係に関するトレーニングをしたい方、心理学をより深く学びたい方は、公認心理師主催の講座をおすすめしています。内容は以下の通りです。

・コミュニティに所属,温かい関係を築く
・温かい雰囲気を出す会話練習
・温かい人間関係を築くトレーニング
・心理学講座でメンタルヘルス向上

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コミュニケーション講座

ダイコミュ用語集監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

・出典

[1] 広井良典(2008).「コミュニティの中心」とコミュニティ政策 千葉大学 公共研究 第5巻第3号

[2]鈴木広(1986).都市化の研究.恒星社厚生閣

[4] McMillan, D. W., & Chavis, D. M. (1986). Sense of community: A definition and theoryJournal of Community Psychology, 14(1), 6–23.

[6] 大坪岳(2017). 青年期のコミュニケーション・スキルとソーシャル・サポートがレジリエンスに及ぼす影響 追手門学院大学心理学論集;Otemon Gakuin University Psychological Review

[7] 内閣府(2014).平成25年度 我が国と諸外国の若者の意識に関する調査 生活環境と個性が友人数に与える影響

[8] 法務省(2008).平成20年犯罪白書 第二部 特集「高齢犯罪者の実態と処遇」高齢犯罪者の同居状況(特別調査の結果)

[9] Ringelmann, M. (1913) “Recherches sur les moteurs animés: Travail de l’homme” [Research on animate sources of power: The work of man], Annales de l’Institut National Agronomique, 2nd series, vol. 12, pages 1-40.

[10] Asch, S. E. (1956). Studies of independence and conformity: I. A minority of one against a unanimous majority. Psychological Monographs: General and Applied, 70(9), 1–70. https://doi.org/10.1037/h0093718