皆さんこんにちは。人間関係講座を開催している公認心理師の川島達史です。今回は「アイコンタクト」について解説していきます。

アイコンタクト

目次は以下の通りです。

①アイコンタクトの意味とは
②コミュニケーション上の意味
③アイコンタクト研究

是非最後までご一読ください。

アイコンタクトの意味とは

意味

心理学辞典(1999)[1]ではアイコンタクト(視線の交錯)は以下のように定義されています。

二者間で互いに相手の目に意識的な視線を向け見つめ合う状態
相手との積極的な関与を示したり、相手からの即時的な反応を期待して用いられる

社会的な目的

人は無意識に目や表情から、ポジティブ・ネガティブな雰囲気を察知します。また相手に自分の感情を伝え、相手に注目している意図を示すためにアイコンタクトを用います。場面によっては、視線が交わることで強い感情が生まれることもあります。特に社交的な会話では、アイコンタクトが最も感情を表現する手段となります。これは、相手の感情や意図について詳細な情報を得ることができるからです。

一方で、グループ内で特定の個人がアイコンタクトを欠いている場合、その個人は疎外感を抱く可能性があります。逆に、長時間アイコンタクトを続けることで相手に対する興味を示すことができます。

また、状況によっては相手の興味を引きつけたり、確認したりする手段となります。魅力的な相互のアイコンタクトは、短い一瞬の視線から始まり、次第に繰り返されるアイコンタクトへと発展することがあります。

コミュニケーション上の意味

コミュニケーションにおけるアイコンタクトは、相手との関係や感情を示す重要な手段です。以下は異なるアイコンタクトの意味についての考察です。

見つめる

相手をしっかりと見つめることは、興味や尊重を表す一般的な手段です。この行為は相手に対する注意を示し、信頼感を築くのに寄与します。しかし、長時間の見つめすぎは圧迫感を与える可能性があります。

目をそらす

目をそらすことは、照れくさい感情や不安を抱いている可能性があります。また、相手とのアイコンタクトを避けることで、敬意や謙虚さを示す場合もあります。ただし、過度に目をそらすと無関心や不誠実と受け取られることがあります。

ちらりと見る

瞬間的な視線やちらりと見ることは、通常は無意識的なものであり、興味や好奇心を表すことがあります。しかし、過度に繰り返すと興味本位や侵害感を与える可能性があります。

にらむ

にらむことは、興奮や怒り、疑念を示す可能性があります。このアイコンタクトは相手に対する強い感情を表すがゆえに、注意が必要です。適切なコンテキストでない場合は誤解を招く可能性があります。

コミュニケーションにおいては、相手のアイコンタクトを注意深く観察することが重要です。異なる文化や状況においても、アイコンタクトは感情や意図を伝えるための重要な手段であるため、相手の非言語的なメッセージを理解することがコミュニケーションの円滑さにつながります。

アイコンタクト研究

赤ちゃんの泣き時間が減る

Arnold(2001)[2]の研究では、ドイツの生後12週間の赤ちゃんを対象に、アイコンタクトと母親の感受性が時間とともにどのように変化するかを調査しました。研究では、母親と赤ちゃんのアイコンタクトを観察するため、12週間にわたり毎週ビデオを撮影しました。

その結果、ドイツの母親と赤ちゃんのアイコンタクト量は、最初の12週間で継続的に増加していったことが明らかになりました。最初の週から4週目までにアイコンタクトを保った母親は、赤ちゃんに対して敏感であるとされ、逆にアイコンタクトを保持しなかった場合は、母親の行動が鈍感であるとされました。また、アイコンタクトと赤ちゃんの泣き時間との間には負の相関関係があり、アイコンタクトが増えると泣くことが減る傾向が見られました。

時間の経過とともに、母親の感受性も安定していることが示され、感受性の高い母親は子供の行動上の問題に気づく可能性が高いという結論が導かれました。

印象形成で2番目に重要

梅野(2015)[3]は、笑顔やアイコンタクトなど、非言語コミュニケーションと好感の関係について、大学生230名に対して調査を行いました。

結果は下の図のようになりました。概観してみてください。

アイコンタクトと研究,好感度の統計

研究結果を見ると、目の表情は、笑顔ほど重視されないものの、髪色やアクセサリーより好感に影響することがわかります。アイコンタクトは非言語コミュニケーションにおいて笑顔に次いで重要だと言えます。

自信があるように見える

深山ら(2002)[4]は、人の顔のアニメーションを利用して“視線と印象の関係”について研究しました。その結果の一部が下図となります。

図を要約すると、
・アイコンタクトが適度にある
「自信がある」「強い」

・下を向いている
「自信がない」「弱い」

という印象になることがわかりました。

会話に入りやすくなる

青山・戸北(2005)[5]は、小学5年生を対象にアイコンタクトと発話の関連を調べています。その結果の一部が下図となります。概観してみてください。

アイコンタクト 苦手

この図からわかるように、視線を受けている人は、発話数が高い傾向にあることがわかります。特に女性は視線を受ける、受けないで発話数が大きく変化しています。

会話場面で下を向いたり、スマフォをいじっていると、会話に入れない可能性が高くなると言えます。

50%前後が適切

深山ら(2002)[4]は、20代から30代の男女13名を対象に、視線と印象操作の関連を調べました。参加者は凝視量によって「1/4・1/2・3/4・全て凝視」の4群に分けられました。

グラフから、友好度を高める凝視量は1/2から3/4であることが分かります。

アイコンタクトと時間。友好度の研究

例えば、
相手との対面総時間が60秒だった場合「30秒~45秒」になります。

この範囲内から逸れると、「話し辛い人だな」「会話しにくい…」といった印象を持たれるかもしれません。

⑤0.5秒〜1秒が最適

深山ら(2002)の同研究[4]では、参加者は凝視時間を基準にして「0.5秒・1秒・2秒」の3群に分けられました。グラフから、友好度を高める凝視時間は0.5秒から1秒であることが分かります。

そして凝視時間が1秒を超えて2秒に近づくと、友好度は下がることも分かります。

アイコンタクトと友好度の研究

このように、アイコンタクトと言っても、相手の目を凝視し続けるのはあまりよくないことがわかります。凝視は悪い印象を与えてしまうため、0.5~1秒程度で十分だと言えます。

心拍数が減る

Akechiら(2013).[7]成人のフィンランド人20名と日本人20名を対象に、アイコンタクトの自律神経反応について東洋と西洋の文化の違い調査しました。

研究では、以下の3つの条件でそれぞれの違いを比較しました。

・直視する
・目をそらす
・目を閉じる

その結果が以下の図です。まずは日本の結果を見ていきましょう。

アイコンタクト 心拍数 日本

このように、目をそらす条件と目を閉じる条件と比較して、直視する条件の方が心拍数が下がっていることが分かります。またいずれの群も、時間が経つほど、心拍数が低下することが分かります。

次にフィンランドの結果をみていきましょう。以下の図をご覧ください。

 

アイコンタクト 心拍数フィンランド 

このように、フィンランドにおいても同様の結果が出ていることが分かります。アイコンタクトの心拍数減少は文化による差がほとんどないといえるでしょう。

2分以上のアイコンタクトで恋愛感情が高まる?

Joanら(1989)[7][8]の研究では、96 人の被験者を対象に異性の手や目を見つめるなどを含む5つの条件で、結果を比較しました。その結果、異性の目を見つめる条件の方が、ほかの条件と比べて高い恋愛感情を報告しました。

さらに研究2では、異性と見つめ合った被験者は相手に対する性質的な愛、好意の感情を大幅に増えたとのことです。これらの研究から見知らぬ異性と2分間、視線を交わすとお互いに熱い愛情が芽生えることが明らかになりました。

2分間もの間、相手とアイコンタクトを続けると、恋に落ちるきっかけとなる化学物質「フェニルエチルアミン(PEA)」が生成されることが分かっています 。長時間お互いに見つめ合うことは、恋愛感情を高めるきっかけとなるかもしれません。

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ダイコミュ用語集監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

・出典

[1] 中島 義明 子安 増生 繁桝 算男 箱田 裕司 安藤 清志 (1999).心理学辞典 有斐閣

[2] Arnold Lohaus, Heidi Keller, and Susanne Voelker(2001). Relationships between eye contact, maternal sensitivity, and infant crying. International Journal of Behavioral Development Volume 25, Issue 6

[3] 梅野莉奈(2015).好感をもたらす非言語コミュニケーションに関する研究 目白大学大学院 修了論文概要

[4] 深山篤・大野健彦・武川直樹・澤木美奈子・荻田紀博(2002).擬人化エージェントの印象操作のための視線制御方法 情報処理学会論文誌

[5] 青山 康郎・戸北 凱惟(2005).発話を促す話し合いの場に関する研究 日本教科教育学会誌 第28巻 第1号

[6] Akechi H, Senju A, Uibo H, Kikuchi Y, Hasegawa T, Hietanen JK (2013). Attention to Eye Contact in the West and East: Autonomic Responses and Evaluative Ratings. PLoS ONE 8(3): e59312. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0059312

[7] Kellerman, J., Lewis, J., & Laird, J. (1989). Looking and loving: The effects of mutual gaze on feelings of romantic love. Journal Of Research In Personality, 23(2), 145-161. doi: 10.1016/0092-6566(89)90020-2/ Eye Contact– StudySmarter