暗黙の協調の意味

皆さんこんにちは。コミュニケーション講座を開催している公認心理師の川島達史です。今回は「暗黙の協調」について解説していきます。

暗黙の協調

目次は以下の通りです。

①暗黙の協調とは
②影響する心理
③関連コラム

是非最後までご一読ください。

 ①暗黙の協調とは

意味

Ricoら(2008)[1]によると、暗黙の協調とは以下のように定義されています。

暗黙の協調とは,明示的なコミュニケーションを取ることなしに、他メンバーの行動や状況に応じた行動を推測し合い,自らの行動を修正・調整して円滑な連携を取ること

フット・ボールなどのスポーツで,チームメイトと明確なコミュニケーションをせずにボールのパスを円滑に行うノールック・パスが代表例として挙げられます。暗黙の協調は,「阿吽の呼吸」「以心伝心」「空気を読む」とも表現され、高度に成熟したチームがなせる技といえます。

効果

暗黙の協調ができていると、直接コミュニケーションをしなくても必要な行動を取ることができ、チームのパフォーマンスが上ります。

暗黙の協調で大切なのは、相手の状況を把握してさらに推測・予測する力も必要になります。また、指示待ちや指示受けなどの消極的な姿勢ではなく、チームに貢献する積極的な姿勢も求められてきます。

チームワークとしては上位の概念ですが最終的には、お互い以心伝心で動けるように普段からたくさんコミュニケーションをしていく必要があるのです。

モデル

冨士本大哲(2008)[2]は以心伝心が成立するプロセスをモデル化しています。

暗黙の協調 ダイナミクス

私たちは「考えていることは同じ」という仮定の下でコミュニケーションを行います。1回でうまくいかないときは、修正をして再試行します。これを繰り返すことで、コミュニケーションの精度が上がっていくのです。

振り返りを大事にする

秋保ら(2018)[3]は大学生の参加者144人を二人一組72チームにわけ、チームの活動が暗黙の協調にどのような影響を与えるのかを調査しました。

暗黙の協調 遂行度

その結果、チームの振り返りによって暗黙の協調が促されることが明らかになりました。振り返りをこまめに実施することで、少しずつチーム活動が良好になっていくと言えます。

②影響する心理

排除回避と協調性

協調には、「排除回避の協調性」「調和への協調性」の2つがあるという見解もあります(橋本,2015)[4]。排除回避の協調性とは、嫌われたくないから協調する、仲間外れにされたくないから協調する、という意味があります。一方で「調和への協調性」は和を大事にしたい、みんなの役に立ちたい、という前向きな協調性になります。

ここからは推測となりますが、暗黙の協調が見られるとき、その裏側にはこの2つの心理が影響していると考えられます。行動としては同じように協調をしていても、内面の動機としては違いがあるのです。

排除回避と協調性

橋本ら(2015)[4]は日本人大学生118名、アメリカ人大学生112名、を対象に協調性に関する研究を行いました。その結果の一部が下図となります。

本音 排除回避の協調性

こちらは「排除回避の協調性」について日米で比較したものです。排除されたくないから協調するという傾向は、日本人の方が10%程度高いことがわかります。

本音 調和への協調性

こちらは「調和への協調性」について日米で比較したものです。和を大事にしたい、みんなの役に立ちたいという協調性はアメリカの方が20%程度高いことがわかります。

 

③関連コラム

協調性をつける方法

協調性を向上させる効果や方法を以下のコラムで解説しました。声掛けの方法、気持ちの読み取り方を理解したい方は参考にしてみてください。

協調性ない,を改善する方法

人の気持ちがわからない

暗黙の了解がわからない方は、非言語の読み取り力などが不足している可能性があります。人の気持ちがわからない感覚がある方は以下のコラムを参照ください。

人の気持ちがわからない原因と対策

学びを深めたい方へ

コミュニケーションに関する学びを深めたい方、トレーニングをしたい方は、公認心理師主催の講座をおすすめしています。内容は以下の通りです。

・健康的な協調性を身に着ける練習
・人間関係の心理学の学習
・聞き上手,話し上手になる,トレーニング
・支援の力をつける,共感トレーニング

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暗黙の協調の意味とは,コミュニケーション講座

ダイコミュ用語集監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

・出典

[1] Ramón Rico, Miriam Sánchez-Manzanares, Francisco Gil and Cristina Gibso(2008).Team Implicit Coordination Processes: A Team Knowledge-Based Approach The Academy of Management Review Vol. 33, No. 1  pp. 163-184 (22 pages)Published By: Academy of Management

[2] 冨士本大哲,橋本 敬(2008).Language-Game における以心伝心的コミュニケーションの成立過程  情報処理学会研究報告数理モデル化と問題解決(MPS) 17号 101 – 104ページ

[3] 秋保亮太 縄田健悟 池田浩 山口裕幸(2018).チームの振り返りで促進される暗黙の協調: 協調課題による実験的検討 社会心理学研究 第34巻第2号
67–77

[4] 橋本博文, 山岸俊男(2015).適応論的視点にもとづく独立性と協調性の日米差の検討 日本心理学会第79回大会 セッションID: 3AM-016