感謝の気持ちの意味とは?
意味
心理学者のTsang(2006)は以下のように定義しています。
人の善意によって自分が助けられていると感じることで起こる肯定的な感情
他者の道徳的行為に対する情緒的反応(McCullough,
Kilpatrick, Emmons, & Larson, 2001)
私たちは1人では生きていけません。日々誰かの助けによって生きています。その助けを認識した時に、私たちは感謝の気持ちを持つことになります。
21世紀と感謝
感謝の気持ちについて、20世紀においては比較的軽視されてきました。なぜなら20世紀は不安や抑うつという感情に関する研究が多かったからです。
21世紀になるとセリグマンという心理学者が、ポジティブ心理学を提唱し、人間の肯定的な感情の研究が盛んになりました。
感謝の気持ちもここ20年で様々な論文が発表され、人間の心理にポジティブな影響があることがわかってきました。
効果研究
感謝の気持ちには様々な効果があります。筆者の川島は感謝に関する論文を複数読みましたが、ほぼすべての論文で肯定的な結果になっていました。
職場の人間関係が良くなる
山・降矢ら他(2008)は北海道の病院にて”笑顔“と”感謝の気持ち“の研究を行いました。
具体的には看護師さんに1ヵ月間、「笑顔で『ありがとう』を言葉にすること」を実施してもらい、どのような心理的な効果が出るかを検証したのです。その結果以下の図のようになりました。
いかがでしょうか。
・同僚への信頼感が向上
・仕事のやりがいが向上
・「ありがとう」が習慣化した
などの項目が、1ヵ月後にアップしていることがわかります。(上図参照)。感謝の気持ちを持つと、職場の人間関係を向上させ、お互いの仕事のやりがいを向上させることができるのです。
夫婦円満になる
Allen W. Barton(2015)ら米国ジョージア大学の研究チームは、468組の夫婦を対象に感謝の表現が結婚関係にどのような影響を与えるかということを調べました。
以下は、女性の離婚のしやすさに影響する結果です。
図のように、夫婦間で、感謝表現が低いと離婚のしやすくなることがわかります。今回の図は女性の統計となりますが、男性でも同じような結果になっています。
日常的に感謝する気持ちが夫婦関係の質を高め、相手にその気持ちを積極的に伝えることが良好な夫婦関係の継続につながるといえます。
幸福度を高める
花井・宮本(2014)は大学生38名を対象にして感謝と幸福感の関連を調べました。
主観的幸福感とは、自身の感情状態に加えて、家族・仕事など人生全般に対する満足を含む、広範な概念のことです。
この研究では、大学生を感謝群と印象群の2つに分けて実験が行われました。
感謝群には
「感謝したことを1つ思い出してください」
印象群には
「一番印象に残ったことを1つ思い出してください」
と促したところ、次のような結果になりました。
感謝群
主観的幸福感は大幅に高まる
印象群
主観的幸福感はほぼ変わらない
つまり、印象に残ったことを思い出すだけでは、主観的幸福感が高まらないということです。このように、感謝と幸福感は密接に結びついています。
幸福感を高めるためには、感謝する機会を持つことが重要だと言えます。
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・感謝を伝える,会話の練習
・温かい関係を築く,会話練習
・人間関係を健康的にする心理学の学習
・メンタルヘルス向上,心理療法
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ダイコミュ用語集監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科 修了
取材執筆活動など
- NHKあさイチ出演
- NHK天才テレビ君出演
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
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名前
長田洋和
経歴
- 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
- 東京大学 博士 (保健学) 取得
- 公認心理師
- 臨床心理士
- 精神保健福祉士
取材執筆活動など
- 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
- うつ病と予防学的介入プログラム
- 日本版CU特性スクリーニング尺度開発
名前
亀井幹子
経歴
- 臨床心理士
- 公認心理師
- 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
- 精神科クリニック勤務
取材執筆活動など
- メディア・研究活動
- NHK偉人達の健康診断出演
- マインドフルネスと不眠症状の関連
*出典
・北村瑞穂 (2012) ,「親切と感謝の行動が幸福感に及ぼす影響」,四条畷学園短期大学紀要,45, p30-38.
・奥山麻也・降矢奈保子・吉田絵美・菅原かなえ・沓澤佳代子・金谷春美 (2008) ,「笑顔の導入と「ありがとう」を言葉にすることで人間関係が向上するかの検討」,北海道社会保険病院,7,p14-17.
・Barton, A. W., Futris, T. G., & Nielsen, R. B. (2015). Linking financial distress to marital quality: The intermediary roles of demand/withdraw and spousal gratitude expressions. Personal Relationships, 22(3), 536-549.
・花井菜月・宮本正一 2014 感謝が主観的幸福感に及ぼす影響 東海心理学会第63回発表論文集
Tsang (2006) Gratitude and prosocial behavior Cognition and Emotion, 20, 138-148.
組織における「感謝」感情の機能に関する研究
池田 浩 福岡大学人文学部
(McCullough,
Kilpatrick, Emmons, & Larson, 2001)