愛の三角理論の意味とは
皆さんこんにちは。コミュニケーション講座を開催している公認心理師の川島達史です。今回は「愛の三角理論」について解説していきます。
目次は以下の通りです。
①愛の三角理論の意味
②愛の3つの要素
③愛の形と8種類
④愛情と心理学研究
⑤関連コラム
是非最後までご一読ください。
①愛の三角理論の意味
提唱者
愛の三角理論はアメリカの心理学者 ロバートJ.スタンバーグが1986年により提唱されました[1]。スターンバーグはコーネル大学の人間開発の教授です。主に知性、思考スタイル、愛や憎しみについて研究を行ってきました。
1,500を超える出版物を執筆・共同執筆していることで有名です。
意味
スタンバーグは、愛は親密さ、情欲、責任の3つの要素から成り立つと考え、これを愛の三角理論と名付けました。スタンバーグはこれらの3つの条件がきちんとそろうと、完全な愛になると主張し、1つでもかけると不安定になるとしています。
以下の図が愛の三角理論になります。
初期理論
初期および後期の様々な愛の理論において、スターンバーグの理論に寄与し、影響を与えた2つの特定の初期理論があります[2]。
まず1つ目は、Zick Rubinが提案した「The Theory of Liking vs. Loving(好きと愛の理論)」です[3]。Rubinは、ロマンチックな愛を定義する理論の中で、愛着、思いやり、親密さが一人の人を好きになることと、その人を愛することの違いの3つの主要な原則であると結論づけています。
Rubinによれば、一緒に過ごす時間を単に楽しんでいる場合、その人は相手を好きになるだけです。しかし親密さと情欲を共有することで、「愛」に結びつきます。スターンバーグの理論では、主要な原則が親密さであり、最終的には親密さを使って「思いやりの愛」と「情熱的な愛」の違いを定義します。
次に、2つ目はJohn Leeが提示した「愛のカラーホイールモデル」です[4]。Leeは、原色の愛のアナロジーを用いて、エロス、ルードゥス、ストルゲという3つの異なる愛のスタイルを定義しています。
Leeの理論では最も重要なのは、これら3つのスタイルを組み合わせて、補色の作成と同様に二次的な愛の形を生み出すことができるとの結論です。スターンバーグの理論も同様に、3つの原則を組み合わせることによって、様々な形の愛が生まれることを示唆しています。
②愛の3つの要素
愛の3つの要素について詳しく解説します。
親密さ(intimacy)
親密さとは、お互いに心を開き、愛着を感じる要素であり、これがあることで2人の絆が深まり、気持ちが通じ合い、安心感が生まれると言えます。この親密さは、共感、理解、思いやり、お互いを尊重することなどによって構築されます。
情 欲(passion)
情欲とは性的な関係を含む、魅惑的な感覚を意味します。情欲を大事にする方は、性的な関係を結ぶ、ロマンチックな関係、ドキドキするシチュエーションを重視します。
責任(commitment)
コミットメントは関係において意識的な決断が重要です。これは相手との長期的な関係を構築する上での約束や忠誠心、努力やサポートの提供が含まれます。コミットメントは短期と長期で異なる意味を持ち、愛の決断とその維持に関わります。
③愛の形と8種類
愛の形と8種類とは
スタンバーグは愛の三角理論において、愛を以下の8種類にわけています。
それぞれ詳しく解説していきます。
非愛
3つの愛の形がいずれも存在しない状態です。関係に無関心で、友人でも恋人でもない人が非愛に当たります。
好き/友情
情熱や責任がなく、親密さだけある状態です。仲の良い友人や知人が当てはまります。
夢中の愛
親密さや責任がなく、情欲だけがある状態です。恋愛の初期段階がこれに当たります。親密さや責任を育むことがなく、急に冷めてしまうことがあります。
空の愛
親密さと責任があり、情欲がない状態です。お見合いの初期段階によくみられると言われていますが、時間がたつにつれて別のタイプの愛に代わる傾向にあります。
ロマンチックな愛
親密さと情欲があり、責任がない状態です。ワンナイトで終わる関係によく見られます。最初は夢中の恋愛として始まり、そこから親密さが発展するにつれてロマンチックな愛に変わります。
思いやりの愛
親密さと責任があり、情欲がない状態です。情熱がもはや存在しない長期の夫婦でよく見られます。深い愛情と献身が残っており、友情と同様に仲間への愛として扱われます。
激しい愛
情熱と責任があり、親密さがない状態です。一目ぼれの状態がこれに当たります。
完全な愛
親密さも情欲も責任もある状態です。7種類の愛のうち、完璧なカップルに当てはまる愛であると言われています。
愛は形を変える
スターンバーグによれば、完全な愛のカップルは15年以上良好なセックスを続け、困難を克服し、お互いの関係を充実したものに保つことができます。ただ、スターンバーグは、完全な愛を維持することは難しいことであると主張しています。例えば、情欲が時間の経過とともに失われると、思いやりの愛に変わる可能性があります。現実的には愛は形を変えながら育んでいくことが理想となります。
④愛情と心理学研究
愛情表現が少な状い態だと実際に、どのような問題が起こるのでしょうか?心理学における研究を紹介します。
感謝の不足の影響
米国ジョージア大学の研究チーム(2015)[5]は、468組の夫婦を対象に感謝の表現が結婚関係にどのような影響を与えるかを調べました。その結果の一部が下図となります。
上図は感謝表現が少ない夫婦は、離婚しやすいことを表しています。三角理論においては「親密さ」が重視されていますが、感謝が少ないと三角理論の「親密さ」が欠け、関係が不安定になると推測されます。
会うことと愛の三角理論
金政ら(2003)[6]は、449名の大学生を対象に会う回数や1回当たりの会う時間と愛の三角理論について調査を行いました。その結果が以下の図です。
このように、会う回数が多いほど愛の三角理論の3つの要素が高まることが分かります。なかでも、親密さとコミットメントが強い影響を与えるようです。
頻繁に相手と会うことでお互いの仲が深まり、支え合うような関係になるのかもしれません。
次に1回当たりの会う時間との関係についての結果を見ていきましょう。以下の図をご覧ください。
このように会う時間が長いほど、会う回数が多いほど愛の三角理論の3つの要素が高まることが分かります。
会う回数と会う時間は愛情を深めるうえで、効果的といえるかもしれません。
電話することと愛の三角理論
金政ら(2003)の同研究では、電話の回数や時間と愛の三角理論の関係についても調査を行いました。その結果が以下の図です。
このように電話の回数が多いほど、愛の三角理論の3つの要素が高まることが分かります。対面と比較すると、効果はやや落ちるものの愛情を深めることができると言えそうです。
次に1回当たりの電話時間との関連を見ていきましょう。
このように1回当たりの電話時間が長いほど、愛の三角理論の3つの要素も高まることが分かります。電話時間は会う時間と比較すると、親密さと情熱がにおいて、上回っていることがわかります。
電話の場合は基本的に2人だけの会話です。あくまで推測ですが、秘密を共有し合ったり、悩みを打ち明け合ったりすることで、お互いのパーソナルな部分に触れ親密さが深まるのかもしれません。
⑤関連コラム
愛情表現のやり方
当コラムでは愛の三角理論の意味や研究を紹介してきました。実践的に愛情表現を増やしていきたい方は以下のコラムを参考にしてみてください。愛情表現の心構えや実践的な工夫の仕方を紹介しています。
夫婦関係と会話がない方法
筆者は夫婦の温かい会話を増やす方法をコラムで執筆しています。仲良い夫婦関係を持続させたい方は以下のコラムを参考にしてみてください。もちろん恋愛関係でも役に立つと思います。ぜひご一読ください。
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ダイコミュ用語集監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科 修了
取材執筆活動など
- NHKあさイチ出演
- NHK天才テレビ君出演
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
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名前
長田洋和
経歴
- 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
- 東京大学 博士 (保健学) 取得
- 公認心理師
- 臨床心理士
- 精神保健福祉士
取材執筆活動など
- 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
- うつ病と予防学的介入プログラム
- 日本版CU特性スクリーニング尺度開発
名前
亀井幹子
経歴
- 臨床心理士
- 公認心理師
- 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
- 精神科クリニック勤務
取材執筆活動など
- メディア・研究活動
- NHK偉人達の健康診断出演
- マインドフルネスと不眠症状の関連
[1] 加藤伸弥, 藤森 和美(2020).シャーデンフロイデの機能 : 他人の不幸を喜ぶことの進化的基盤 武蔵野大学心理臨床センター紀要 (20), 22-32, -12
[2] Wkipedia Triangular theory of love
[3] Rubin, Zick (1970). “Measurement of Romantic Love“. Journal of Personality and Social Psychology. 16 (2): 265–273.
[4] Lee, John A. (1976). The Colors of Love. New York: Prentice-Hal
[5] Barton, A. W., Futris, T. G., & Nielsen, R. B. (2015). Linking financial distress to marital quality: The intermediary roles of demand/withdraw and spousal gratitude expressions. Personal Relationships, 22(3), 536-549.
[6]金政祐司, 大坊郁夫(2003).愛情の三角理論における3つの要素と親密な異性関係 感情心理学研究10巻 (2003-2004) 1 号