フラストレーションの意味とは

皆さんこんにちは。心理学講座を開催している公認心理師の川島達史です。今回は「フラストレーション」について解説していきます。

フラストレーション意味,ばた様作成

目次は以下の通りです。

①フラストレーションとは何か
②行動への影響
③3つのプロセス
④心理的,身体的悪影響
④関連コラム

是非最後までご一読ください。

①フラストレーションとは何か

意味

フラストレーションは心理学辞典(1999)[1]において以下のように定義されています。

なんらかの障害によって、行動が妨害され、その結果もたらされる不快な緊張状態

私たちは普段、こうしたい、ああしたいという欲求がありますが、その欲求が満たされないとき、怒り、イライラ、ストレスなどが溜まっていくのです。例えば、自粛が続きフラストレーションが溜まる、ダイエットでフラストレーションが溜まる、理不尽な上司にフラストレーションが溜まる、などが挙げられます。

歴史

フラストレーションの語源は、ラテン語 frustro(裏切る)が語源になっています。期待に対して、現実はそうなっていないという意味が発展し、現在のフラストレーションに発展してきたとされています。

心理学においては、J.ダラードという心理学者が1939年にフラストレーション・攻撃仮説を提唱し、怒りとフラストレーションについて研究をスタートさせ、心理学の世界でも研究されるようになっていきました[2]

1948年になると、ローゼンツアイクという心理学者が、P-Fスタディ(絵画欲求不満テスト) Picture-Frustration を作成し、現在でもフラストレーションという用語は学術的な世界でも広く使われています[3]

②フラストレーションとは何か

フラストレーションがたまると、ネガティブな行動に結びつくこともあれば、ポジティブな行動にむずびつくこともあります。

ネガティブな行動

バーコウィッツとルパージュ(1967)[4]による「武器効果」の研究は、武器や武器の存在が人々の攻撃的行動に影響を与えるという仮説を調査したものです。研究では、100人の男子大学生を対象に、彼らがショックを与える実験を行いました。

その際、一部の参加者の周りに武器(ライフルやリボルバー)が配置され、他の参加者には武器の存在が伝えられませんでした。結果として、武器の存在が告げられたグループの中で、被験者はより多くのショックを与える傾向がありました。

これは、武器が存在する状況で攻撃的な行動が増加することが分かりました。ただし、後の研究や批判により、この効果が一貫して再現されないことや他の要因が影響する可能性も指摘されています。

ポジティブな行動

南(1980)[5]は動機づけのプロセスを「欲求→動因→意欲」の3つからなるとしています。この時、フラストレーションがたまると、欲求が刺激され、動因と意欲につながるとしています。

また私たちはフラストレーションがたまると、環境を改善するために、主張する行動に結びつけることができます。日常的な訴え、裁判、選挙などは、フラストレーションがあるからこそ起こります。

③3つのプロセス

ローゼンツアイク(1948)[3]はフラストレーションを以下の3つの角度から検証していきます。

①状況

フラストレーションが溜まる可能性がある状況をフラストレーション状況と言います。例えば2020年にコロナウイルスの問題が発生し、我慢を強いられましたがこのような状況を意味します。

②耐性

このように問題となる状況に柔軟に対処する力をフラストレーション耐性と言います。問題となる状況が起こったとしても、すべての人がストレスを抱えるわけではありません。ある人この時、考え方や環境をうまく調整することで、前向きに乗り越えていく人がいます。このようにフラストレーション耐性の強さには個人差があります。

③反応

フラストレーション反応とはフラストレーションがある時の心理的、身体的な反応を意味します。私たちは、問題となる状況に対して、フラストレーション耐性を発揮しますが、キャパシティーを超えることも当然あります。その時はフラストレーション反応が起こります。重症化すると、うつ病、適応障害、心身症と言った問題につながる事もあります。

 

④心理的,身体的悪影響

フラストレーションがたまりイライラすると心や体に様々な悪影響があります。

心理的QOLの低下

橋本・織田(2008)[6]は都内大学生・大学院生286名を対象に、「怒りや敵意」と「心理的QOL]について調査を行いました。心理的QOLとは心理的な生活の質という意味があります。以下がその結果です。

フラストレーション 心理的QOL

上図は、短気、怒り、どちらも心理的QOLを下げるという結果になっています。フラストレーションが溜まって短気になったり、敵意を持つと、精神的にも穏やかでなくなり、幸福感が下がると言えます。

自尊心の低下につながる

桜井(2000)[7]は、大学生361名を対象に質問紙を用いて、「不機嫌・怒り」と「自尊心」との関連を調査しています。その結果が、以下の図です。

フラストレーション 自尊心

上図は、不機嫌な状態と、自尊心は負の関係にあることを示しています。要約すると、フラストレーションがたまり、不機嫌な状態が続くと、自分を尊重する気持ちが減っていくと推測されます。不機嫌な状況は、攻撃的になったり、他人からの温かい言葉が不足しがちです。そのため自尊心が低下していくリスクがあるのです。

身体的QOLの低下

橋本・織田(2008)[6]は「怒りや敵意」と「身体的QOL」がどのような関係にあるのか調査しました。以下がその結果です。

フラストレーション 身体QOL

上図は、フラストレーションが溜まることで、体の免疫機能が落ち、健康的でも悪影響があることを意味しています。長い間、欲求不満な生活を続けると、体の健康においても、リスクがあることがわかります。

高血圧のリスク

井澤等(2004)[7]は、男子大学生20名に対象に怒りと生理的な影響について研究を行いました。その結果の一部が下図となります。

フラストレーション 血圧

上図は、衝動的な怒り情動を表す「短気」が、収縮期血圧・拡張期血圧の上昇と関連を示す結果が得られました。フラストレーションを溜め、怒りっぽくなると、心臓に負担がかかるので注意が必要です。

④関連コラム

フラストレーションを改善する方法

当コラムではフラストレーションの意味や研究を紹介してきました。実践的にフラストレーションを改善したい方は以下のコラムを参考にしてみてください。イライラをコントロールする方法などを紹介しています。

フラストレーションを治す方法

 

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ダイコミュ用語集監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

・出典

[1]中島 義明・子安 増生・繁桝 算男・箱田 裕司・安藤 清志(編)(1999).心理学辞典.有斐閣 P712

[2] Dollard, J., Doob, L. W., Miller, N. E., Mowrer, O. H., & Sears, R. R. (1939). Frustration and aggression. New Haven, CT: Yale University Press.

[3] ROSENZWEIG S, FLEMING EE, ROSENZWEIG L(1948).The children’s form of the Rosenzweig picture frustration study. J Psychol.  Jul;26:141-91

[4] Berkowitz, L., & Lepage, A. (1967). Weapons as aggression-eliciting stimuli. Journal of Personality and Social Psychology, 7(2, Pt.1), 202–207

[5] 南博(1980).人間行動学 岩波書店

[6] 橋本 空,織田 正美(2008).大学生における攻撃性とQuality of Lifeの関連性 健康心理学研究 日本健康心理学会編集委員会 編

[7] 桜井 茂雄(2000).ローゼンバーグ自尊感情尺度日本語版の検討 Bulletin of Tsukuba Developmental and Clinical Psychology,Vol.12

[8] 井澤修平・長野祐一郎・依田麻子・児玉昌久・野村忍(2004).敵意性と怒り喚起時の心臓血管反応性の関連 生理心理学と精神生理学,22(3)215-224