7.閉鎖的な部門も外出させる
外部との接触を活発化する
会社であれば,営業職については原則として外部の人とのコミュニケーションがたくさんあるため,コミュニケーション能力を日常的に磨く場が確保されているといえます。これに対して,開発や財務・経理系の仕事をしていると,その部門のなかでの役割によっては外部の人と一切関わることなく日々が過ぎていくことがあります。
私自身は経営者になる前の2 年間,起業の前の丁稚奉公のような形で東京・池袋にあるメーカーの会社員として働いた経験があります。起業の勉強として社長にお願いして会社に入れてもらったのですが、入社当時は銀行の折衝や社長とのやり取りなど上司がすべて独占していたため,コミュニケーションをとる人の幅が非常に狭かったことを覚えています。毎日伝票の整理をしていたり,手形を作ったり,創造性のある仕事ができていたとは思いません。
コミュ力がつく環境を作る
しかし,1 年後に上司が退職すると,環境がガラッと変わり,私は池袋の銀行中を駆け巡るようになりました。その結果,銀行の方や取引先の方と貸付や支払いのサイクルの条件について日常的に話す環境を手にしました。また海外への出張も増え,中国の現地の方と会話をする機会をもらえたりしました。財務状況について経営分析を行い,プレゼンを行う機会もしょっちゅうありました。自分自身1 年目と2 年目では成長した範囲がかなり変わってきたという実感がありました。
また,環境をもらえると本当にコミュニケーション能力はつくのだと感じました。さて,私の場合は特に誰かが意識したわけでなく,たまたま「場」をいただけたわけですが,会社としては「たまたま」では困ります。社員のコミュニケーション能力を向上させることは,会社にとって至上命題なわけですから仕組みとして構築していかなくてはなりま
せん。
強制力のあるルールはある程度必要
そのため,まずは部署ごとに外部との関わりがどれぐらいあるのかということから調査をすることが求められます。会社内部の人間としかコミュニケーションする機会がないとしたら,積極的に外部の方と話す機会を作っていかなくてはなりません。例えば同じ業界の勉強会に参加させるのは1 つの手段となるでしょう。このとき,「場」を作るだけでは効果が薄いので,「名刺を3 枚交換する」などの条件を作って他社の社員との交流を積極的に促す仕組みを作る必要があります。
コミュニケーションをとる時間は「なんとなく」では絶対に確保できません。会社としてコミュニケーションを取らざるを得ない時間を強制的に作り、仕組化していく必要があるのです。